最近のTVニュースで断片的、部分的に取り上げられているものに、「救急車の有料化」、「漢方薬・湿布は保険除外」、「後発品ある新薬の差額を自己負担」といったものがあります。また、少し前ではありますが、「外来通院時の定額負担導入」という話もありました。(それぞれの内容詳細はスペースの関係で他のWEBサイトに譲ります ―― 不親切ですみません)
このネタ元は、毎年この時期に政府が策定する、経済財政運営の基本指針、いわゆる「骨太の方針」の原案ですが、ここには様々な社会保障費抑制策が盛り込まれます。もちろん、法改正や既存の仕組みとの調整など、いくつものハードルがありますから、全てが実現されるわけではありません。下書きをしている財務省でも、そのことは前提としていて、少々刺激的な表現を使ってでも国民や関係者の反応を見る、といったところもあるのではないでしょうか。 ―― もっとも、参考人として招聘した学者の意見も全く無視の政府には、反応がどのようなものであっても意味がないものかもしれません(こちらの話は本題から外れるのでここまでとします)。

話を戻しますと、冒頭のいずれの仕組みも患者に新たな負担を求めるものです。ただし、救急車の有料化や外来通院時の定額負担導入などは、単に医療機関等の収入になる訳ではありません。当然のことながら、これまでそれを賄っていた診療報酬の単価の引き下げがセットで行われますので、少なからず短期的な医療保険財政への改善効果が得られるでしょう。“塵も積もれば”(少しきつい表現ですがご容赦下さい)、○,○○○億円の医療費削減効果、と説明されることもあると思います。

しかし、40兆円に迫ろうとしている国民医療費の前に、わずか数%の削減効果だけが狙いなのでしょうか。答えは「否」です。救急車の料金で、湿布の代金で、外来通院の窓口負担で、医療費膨張という大火に水を掛けようとしているのではありません。本当の目的は、医療機関・調剤薬局を訪れる患者に“適切な”フィルターを掛けることにあるのです。  もっとも、そのフィルターは、何らの基準の無い一律の網目であったり、症状の重症度といった曖昧な網目であったり、議論は全く成熟したものではありません。しかし同時に、私たち一般市民は、医療への入り口にあたって、「限られた医療資源をどう使うのですか」、という、これまで遠回しに問われてきたことについて、経済的負担という直球を投げられていることも自覚しなければなりません。

国は、もっと分かり易く一般市民に対して“問い”を伝える必要があります。そして、民間・一般市民は、救急車保険を作ろう、新薬特約があれば、などといった解決には程遠いその場凌ぎの対応を考えるのではなく、医療(もちろん介護も同じことです)の使い方を一人ひとりが考え直すときなのかもしれません。
それ無しには、これからも増えるであろう“公的医療保険が対象とすべき”というフィルターは、一般市民を医療から遠ざけてしまうものとなってしまうのではないでしょうか。

PDF: ham column #4