2015年4月からの新しい介護報酬の単位数・ルールでの現場でのサービス提供から1ヵ月経過し、連休明けには改定後最初の算定が行われます。

1ヵ月前のニュース番組や新聞等のメディアでは、“4月から値段が変わるもの”の一つとして、介護保険サービス(介護報酬)が取り上げられていたことは記憶に新しいと思います。価格が変わる、という意味では同列に取り扱われることに間違いはありません。しかし、生産原価や流通コストを反映が中心の価格変更とは異なり、介護報酬改定は、これからの介護保険、社会保障の方向性、もっと言えば、どのような高齢社会を作りたいのか、どのような生活を高齢者に送ってほしいのか、を読み取ることができます。

2015年介護報酬改定の骨子として、厚生労働省資料では、中重度の要介護者への対応強化が強調されています(もちろん、他にも、認知症高齢者への対応強化、介護人材確保の推進、評価の適正化なども挙げられてはいますが)。これは、単位数の引き上げや加算項目の新設について、単に、中重度の要介護者のケアに多くの時間やスタッフを要することだけが理由ではありません。

では、そこにはどのような理由や背景があったのでしょうか。
端的には、中重度者、とりわけ医療ニーズが高い要介護高齢者が地域で日常生活を送るケースが急増するためです。介護保険・介護報酬が、医療保険・診療報酬の動向に大きく影響を受けることはご存知の通りですが、医療保険制度では、すっかり定着してしまった在院日数削減や、直近の病床機能別の再編がどんどん進められています。つまりは、介護保険、特に、在宅生活を支える居宅サービス、地域密着型サービスには、入院ではなく在宅介護・在宅療養を選ぶ(選ばざるを得ない)要介護者を支える看護機能の強化が求められ、また、少しでも“自力で”で日常生活を送ってもらうために、日常生活力の回復・維持を担うリハビリテーションの強化が急がれたのです。さらには、サービス事業者単体での強化では追いつかないことを見越して、多様な連携についての評価が予め設定されたのです。

社会保障の建て直し・維持を理由とした消費増税の後であったにもかかわらず、全体の改定率が大きなマイナスとなった以上、メリハリある改定とすべきことは当然です。とすると、通常6年周期で行われていた法改正(制度改正)を3年前倒ししてでも着手すべきものとは何だったのでしょうか。

介護保険制度が社会保障全体の中で担う機能が、1ランクも2ランクも上位(重度の要介護者向けの対応)にステージを変えようとしていることがうかがえます。

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