2015年5月17日付の一般紙の一面をご覧になりましたか。

「新薬と後発医薬品の差額を患者負担へ」、「高齢者の患者負担に資産を考慮へ」など、医療保険・保険財政をめぐる大きな課題について取り上げられていました。それぞれの内容については、簡単によしあしを言えるようなものではありませんし、もちろん、まだ決定された訳ではありませんから、今後の然るべき議論を待たなければなりません。

とはいえ、このまま話を進めるのも何ですから、上の2つについて簡単に説明します。

新薬と後発医薬品の差額を患者負担へ
  ざっくりと言うと、開発コストが価格に含まれている新しい薬(新薬)と、同じ成分・薬効とされ、開発コストを含まず安価な後発薬(ジェネリック)について、現在、3割負担(高齢者1割)で新薬と共通となっている患者負担の仕組みを変え、新薬の患者負担を引き上げることで、今まで以上に後発医薬品の利用を促進する、という考え方です。
例えば、新薬5,000円、後発薬4,000円の場合、今は同じ3割負担なので価格差以上の患者負担の差は発生しませんが、それを、“後発薬がある場合の保険給付は後発薬と同じ額まで” とし、新薬を利用する場合の保険給付は4,000円×7割の2,800円まで、患者はもともとの5,000円×3割の1,500円に加え、差額の700円を新たに負担する、というものです。(これ以上後発薬利用を促進しなくても、100%後発薬利用と同じ保険財政効果がある)

高齢者の患者負担に資産を考慮へ
  こちらは、現在、原則1割となっている後期高齢者医療制度の患者負担が、現在は現役並みの所得がある場合に負担割合が割り増しになる例外について、“預貯金・不動産等の資産についても考慮して2割、3割負担と引き上げていく”、というもので、先の介護保険制度改正で初めて導入された考え方(補足給付について)を、医療保険制度にも横滑りで当てはめるものです。(これまでも、まず財政規模が小さい介護保険制度で試し打ちして、うまくいけば医療保険制度にそのままスライドさせる、という手法は幾度となく採られてきました。入院・入所時の居住費の自己負担化など)

さて、話を戻しますと、上記のように、審議会での議論や関係者による調整が行われてきた、または、必要となる重要な論点について、なぜか日曜日の朝刊で報じられることが多いと感じます。介護保険サービスの利用者負担引き上げ(1割から2割へ)のときも同じでした。もちろん、きちんと読めば、あくまでこれからの検討であることは分かります。ただ、一般紙(新聞、ネット等)の影響力の大きさに鑑みれば、「わざわざ日曜日を選んで、専門的見地からの適時の意見機会を確保せず、世論形成や既成事実化を先行させた」と誤解されかねない方法は安易に繰り返すべきではないと考えます。

PDF: ham column #2